浸透
浸透は、溶質より溶媒をはるかに通しやすい膜を通した溶媒の正味移動です。方向を決めるのは溶媒の化学ポテンシャルであり、「塩が水を引っ張る」という独立した力ではありません。
半透膜が浸透の条件をつくる
溶質は膜を通れず溶媒だけが通れると、二成分が自由に拡散する通常の混合はできません。溶媒は化学ポテンシャルの低い側へ正味に移動する傾向があり、同じ温度・圧力の希薄溶液では一般に溶質粒子濃度の高い側がそれに当たります。膜の選択性が失われ、溶質も速く通れば問題は通常の拡散へ変わります。
浸透圧が正味の流れを釣り合わせる
π = iMRT
理想希薄溶液では π=iMRT。π は溶液側への溶媒の正味流入を止めるために必要な追加圧力、M はモル濃度、T は絶対温度、i は式単位あたりの有効粒子数を近似します。圧力差が溶媒の化学ポテンシャル差を相殺するのであり、膜が未知の「吸引圧」を生むわけではありません。
浸透圧エクスプローラ
張度は生物学的な応用であり同義語ではない
細胞では、観察する時間尺度でどの溶質が膜を通れるかが重要です。総浸透濃度が同じ等浸透圧の溶液でも、溶質が細胞内へすぐ移動すれば等張とは限りません。低張・等張・高張という分類は濃度だけでなく膜透過性を含む生物学的な概念です。
実在溶液は理想式からずれる
van ’t Hoff 式は希薄溶液で最もよく働きます。電解質イオンは互いに相互作用し、分子は会合することがあり、実在膜も完全選択的ではありません。濃度が高い場合は単純な粒子数だけでなく活量や浸透係数が必要です。逆浸透では浸透圧より大きい外圧を加え、溶媒を自発的な浸透と逆向きに動かします。
計算例
1. スクロースの浸透圧
解答
0.20 M のスクロースを 298 K、i≈1 とすると π≈(0.20)(0.08206)(298)=4.89 atm です。
2. 理想 NaCl との比較
解答
同じ M と T なら理想的な NaCl は i≈2 なので、非電解質のおよそ2倍の浸透圧になります。実在のイオン溶液では相互作用によりずれます。
3. 逆浸透
解答
浸透圧が 25 bar の溶液側に 30 bar を加えれば π を上回るため、溶媒の正味流れを自発的な浸透と逆向きにできます。