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価電子

価電子は化学結合や反応に最も直接関与する電子である。主族では通常、最大の主量子数 n を持つ殻の電子を数える。遷移金属では近いエネルギーの d 電子も結合や酸化状態に参加するため、より広い定義が必要になる。

主族原子の価電子を数える

Na は [Ne]3s¹ なので外殻電子は 1 個、Cl は [Ne]3s²3p⁵ なので 7 個である。主族の同じ列では ns/np の占有パターンが繰り返し、族ごとの化学的類似性を作る。

主族の価電子数G11G22G133G144G155G166G177G188主族では ns・np の外殻パターンが列ごとに繰り返す例外:He は 1s² で、第18族でも価電子は2個
主族の列は外殻電子配置を繰り返す。これが同族元素に似た化学が現れる大きな理由である。

第18族の代表元素は通常 ns²np⁶ で 8 個だが、He は第一殻の 1s² が閉殻なので価電子は 2 個である。

ルイス記号と結合

COClCOCl価電子 4 e⁻価電子 6 e⁻価電子 7 e⁻
ルイス記号は全電子ではなく価電子だけを示す。結合に使える電子と孤立電子対を素早く把握できる。

ルイス記号では一つの点を一つの価電子として元素記号の周囲に置く。C の 4 個は多くの中性化合物で 4 本の結合、O の 6 個は 2 本の結合と 2 組の孤立電子対、Cl の 7 個は 1 本の結合と 3 組の孤立電子対に対応しやすい。

価電子、形式電荷、ルイス構造

ルイス構造では構成原子の価電子を合計して結合と孤立電子対へ配分する。形式電荷は共有電子を等分する記帳法で、結合電子を電気陰性度の高い側へ全て割り当てる酸化数とは別物である。

内殻電子が常に化学的に無関係とは限らない

通常の結合モデルでは内殻を不活性なコアとして扱えるが、高分解能分光、重元素の相対論効果、コア分極では価電子と内殻の結び付きも現れる。「価電子」は反応性を考えるための便利な区分である。

イオン、酸化状態、遷移金属

遷移金属・内遷移元素では価電子の範囲が広い

Fe は [Ar]3d⁶4s² と書かれる。4s と 3d のエネルギーが近いため、d 電子も結合、磁性、複数の酸化状態に関与する。最大 n の電子だけを数えると遷移金属の化学を見落とす。

価電子数は族を予測するが、全ての酸化状態を決めない

第17族が一電子を受け取りやすいなど、外殻パターンは強い指針になる。しかし実際の酸化状態は結合エネルギー、格子、溶媒、配位子、反応全体の自由エネルギーにも左右される。

価電子構造が化学へ与えるもの

同族で外殻配置が繰り返すため、結合数、イオン形成、反応性に共通パターンが生まれる。ただし軌道の大きさ、電気陰性度、分極率は周期によって変わり、同じ価電子数でも化学は完全には同じにならない。

分光法は価電子状態を直接調べられる

光電子分光では電子を取り去るためのエネルギーを測り、価電子帯と深いコア準位を区別できる。価電子ピークの位置や形は結合環境で変化するので、価電子はルイス点だけでなく実験的な量子状態でもある。

演習

1. 硫黄

S = [Ne]3s²3p⁴。価電子はいくつか。

解答

最大 n=3 の殻に 2+4=6 個あるので、主族の価電子は 6 個。

2. アルミニウム

Al = [Ne]3s²3p¹。価電子はいくつか。

解答

n=3 の外殻に 3 個あるため、Al の価電子は 3 個。

3. 鉄

Fe を最大 n だけで数えると不十分なのはなぜか。

解答

3d と 4s が近いエネルギーにあり、3d 電子も結合や酸化状態変化へ参加するからである。