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酸化数

酸化数は形式的な電子記帳法である。結合電子をより電気陰性な原子へ全て割り当てたと仮定し、そのイオン近似で各原子が何価になるかを表す。酸化還元反応を追うには非常に有用だが、実測される原子の部分電荷そのものではない。

基本規則と適用順序

単体は 0、単原子イオンはイオン電荷に等しい。通常の化合物で F は −1、O は通常 −2、H は非金属との化合物で通常 +1、金属水素化物では −1 である。

全原子の酸化数の代数和は分子・イオンの総電荷に一致する。F、O、H の例外を含む優先順位を守り、最後に総和条件で未知数を決める。

H₂OH₂O₂KO₂H +1, O −2H +1, O −1K +1, O −1/2O は通常 −2 だが、過酸化物・超酸化物には例外がある酸化数は形式的な電子記帳で、実測部分電荷ではない
規則には優先順位と例外がある。O–O 結合や F との結合では「O = −2」を機械的に使えない。

計算例

KMnO₄

K=+1、O は 4 個で −8。Mn=x とすると +1+x−8=0 だから Mn=+7。

SO₄²⁻

O の合計は −8、イオン全体は −2 なので S−8=−2、したがって S=+6。

NH₄⁺

H を +1 とすると N+4=+1 なので N=−3。

Fe₃O₄

O 四個で −8、三個の Fe は合計 +8、平均は +8/3。有用なイオン像では Fe²⁺ 一個と Fe³⁺ 二個に分けられる。

形式電荷・酸化数・部分電荷は違う

形式電荷は共有電子を等分し、酸化数は電気陰性な側へ全て割り当てる。部分電荷は実際の量子力学的電子密度から得られ、通常は整数ではない。CO₂ の C が酸化数 +4 でも実電荷 +4e ではない。

分数・混合酸化状態

組成式から出る分数酸化数は異なる局所サイトの平均を隠していることがある。Fe₃O₄ の平均 +8/3 は Fe²⁺/Fe³⁺ 混合価で表せる。一方、電子が本当に非局在化した固体では整数を各原子へ割り当てる絵が不完全で、分光や磁性が必要になる。

酸化数の変化で酸化還元を見抜く

酸化数が増えるのが酸化、減るのが還元である。Zn + Cu²⁺ → Zn²⁺ + Cu では Zn:0→+2 が酸化、Cu:+2→0 が還元。

酸化剤は自分が還元される物質、還元剤は自分が酸化される物質である。酸化数を追えば名称を逆にする典型的な誤りを避けられる。

通常規則の重要な例外

F は通常 −1 なので OF₂ では O=+2 になる。H₂O₂ の O は −1、KO₂ の O は平均 −1/2。H は多くの非金属化合物で +1 だが NaH、CaH₂ では −1。これらは電気陰性度に基づく電子割当の結果である。

酸素水素H₂O: O = −2H₂O₂: O = −1KO₂: O = −1/2 平均OF₂: O = +2HCl: H = +1H₂O: H = +1NaH: H = −1CaH₂: H = −1
例外は電気陰性度と結合環境から生じる。過酸化物、超酸化物、フッ化物、金属水素化物を区別する。

平均酸化数と局所サイト

分数平均は複数の整数価サイトを表す場合も、非局在電子を表す場合もある。化学式だけで区別せず、構造、分光、磁性を合わせて判断する。

配位化学・共有結合化学での酸化数

[Fe(CN)₆]⁴⁻ では 6 個の CN⁻ が −6、錯体全体が −4 なので Fe=+2。レドックス非無害配位子では電子密度が金属と配位子にまたがり、酸化数は便利な記帳だが完全な電子構造ではない。

繰り返し使える決定手順

①単体=0、単原子イオン=電荷。②Fを先に置き、OとHは例外を確認。③必要なら1族+1、2族+2などを使う。④未知数を x とする。⑤総和を種の電荷に等しくして解く。推測より代数が安全である。

酸化数と結合極性は関係するが同一ではない

HCl では形式上 H=+1、Cl=−1 だが、実際の結合は極性共有結合で原子が ±1e を持つわけではない。酸化数は反応の電子記帳、部分電荷は電子密度の物理量である。

演習

1. クロム酸イオン

CrO₄²⁻ の Cr の酸化数を求めよ。

解答

O 四個で −8。Cr=x として x−8=−2 より Cr=+6。

2. 水素化物

CaH₂ の H の酸化数は。

解答

Ca は +2 なので二個の H 合計が −2、各 H は −1。金属水素化物の例外である。

3. 酸化還元の向き

ある元素が +3 から +2 へ変わった。酸化か還元か。

解答

酸化数が下がっているので還元である。