原子のエネルギー準位
原子のエネルギー準位は、原子の量子状態が取り得る許されたエネルギーです。等間隔の棚ではなく、核電荷、遮蔽、電子間反発、占有軌道によって構造が決まります。
離散状態とエネルギーの意味
無限遠の自由電子を0と定義すると、束縛電子の全エネルギーは負です。より負ならより強く束縛され、0以上に達すると電離連続体へ入ります。
水素では非相対論的に Eₙ=−13.6 eV/n²。n が大きくなるほど準位間隔は狭くなり電離限界へ集まります。多電子原子では遮蔽と電子間反発のため単純式は成り立ちません。
光子が二つの状態を結ぶ
遷移で交換されるエネルギーは準位差に一致しなければなりません:ΔE=hν=hc/λ。吸収は高い状態へ、放出は低い状態への遷移です。
したがってスペクトル線の波長は二状態のエネルギー差を測っており、単独の軌道に固有の「色」を与えるものではありません。
殻・副殻・準位は同義ではない
最も単純な水素模型では同じ主量子数 n の状態はほぼ縮退しますが、多電子原子では貫入と遮蔽により同じ殻の s,p,d,f 副殻が分裂します。微細構造、スピン軌道相互作用、外部電場・磁場はさらに準位を分裂させます。
励起・電離・寿命
電離限界より下なら励起状態も束縛状態です。励起状態は通常崩壊しますが、選択則が光との結合強度を左右するため寿命は大きく異なります。
準安定状態は直感より長寿命になり得ます。レーザーは励起状態の占有数と誘導放出を制御して利用します。
光子計算器
クーロン引力から得る水素様準位
理想的一電子水素様イオンでは Eₙ=−13.6 Z²/n² eV。したがって He⁺ の基底状態の束縛は H の4倍ですが、多電子になると遮蔽と反発で単純な Z² 則は崩れます。
縮退・分裂・選択則
同じエネルギーをもつ量子状態を縮退と呼びます。スピン軌道相互作用、ゼーマン効果、シュタルク効果は縮退を解きます。存在する任意の二準位が強い線を作るわけではなく、遷移確率は対称性と角運動量から来る選択則にも支配されます。
多電子原子と光電子分光
多電子原子では 3p や 4s のエネルギーは電子配置全体から独立ではなく、貫入、遮蔽、電子相関で変わります。光電子分光では既知の光子エネルギーで電子を放出し、その運動エネルギーから結合エネルギーを求めます。
実在原子の準位図
Na の 3s→3p は約589 nmの強い黄色線を与え、二重線は微細構造を示します。Heでは一重項・三重項が現れます。準位図の水平線は多電子量子状態であり、「電子がその高さに座る」図ではありません。
しきい値と線スペクトル
束縛→束縛遷移は離散線を作りますが、束縛→自由吸収は電離しきい値から連続体になります。放出電子がさまざまな運動エネルギーを持てるからです。しきい値は初期状態の電離エネルギーを与え、運動エネルギー分布は電子構造の追加情報を含みます。
演習
水素の励起
解答
n=1→2 には −3.40−(−13.6)=10.2 eV が必要です。
放出波長
解答
3.10 eV を放出する遷移なら λ≈1239.84/3.10≈400 nm。
励起と電離
解答
励起は別の束縛状態へ移すこと、電離は連続体までエネルギーを与えて電子を原子から外すことです。