質量とエネルギーの等価性
質量とエネルギーの等価性は、静止質量そのものが系のエネルギー収支の一部であることを示します。静止している系では E₀=mc² です。核物理では、反応前後のごく小さな静止質量差が直接測定できる大きさのエネルギーに対応します。
静止エネルギーと相対論的全エネルギー
E=mc² は静止エネルギーの関係式です。運動する粒子の全エネルギーは E²=(pc)²+(mc²)² を満たします。核反応では全エネルギーと運動量を同時に保存する必要があり、静止質量だけが独立に保存される必要はありません。
Q値はエネルギー収支を表す
Q=(m初期−m最終)c² です。原子質量単位を使えば 1 u·c²≈931.5 MeV。Q>0 ならエネルギーが放出され、Q<0 なら供給が必要です。実験室系では運動量保存のため、入射粒子のしきい値が |Q| より大きくなる場合があります。
質量欠損換算
なぜ c² が小さな質量差を重要にするのか
光速の二乗は非常に大きな換算係数です。そのため通常の秤では検出できないほど小さな質量変化でも、核反応では MeV スケールのエネルギーに対応します。化学結合でも質量は変わりますが、相対的な変化ははるかに小さいのが普通です。
核融合と核分裂も同じ収支で読める
生成物の方が強く束縛され、全静止質量が小さくなれば、核融合でも核分裂でもエネルギーを放出できます。「失われた質量」は消えたのではなく、生成物の運動エネルギー、光子、励起エネルギーに移っています。質量は系全体の性質であり、密閉した物体を加熱したり原子を励起したりすれば ΔE/c² だけ質量も増えます。
例題
1. 質量欠損を換算する
解答
Δm=0.0020 u なら Q≈0.0020×931.5=1.86 MeV。
2. SI質量からエネルギーを求める
解答
Δm=1.0×10⁻¹² kg なら ΔE=Δmc²≈9.0×10⁴ J。
3. Qの符号
解答
生成物の静止質量が反応物より0.005 u大きいなら Q≈−4.66 MeV で、エネルギー供給が必要です。