粘度
粘度は、隣り合う流体層が異なる速さで動くときに互いのずれをどれだけ強く妨げるかを表します。蜂蜜が水より流れにくいことや、実在する管内流で機械的エネルギーが失われることの根本にある性質です。
動的粘度とせん断
τ = η du/dy · ν = η/ρ
ニュートン流体では、せん断応力は流れに垂直な速度勾配に比例し、τ=η du/dy。τ はせん断応力、η は動的粘度、du/dy は速度勾配です。η の SI 単位は Pa·s。動的粘度 η と、密度で割った動粘度 ν=η/ρ(m²·s⁻¹)は区別してください。両方とも流体力学で使いますが意味は同じではありません。
管内の層流
Q = πΔp r⁴/(8ηL)
円管内のニュートン流体の定常層流では速度分布は放物線型で、中心が最も速くなります。固体壁では通常no-slip 条件を用い、壁に接した流体の速度は壁の速度と同じです。剛体円管のポアズイユ則は Q=πΔp r⁴/(8ηL)。定常層流、ニュートン流体、円形剛体管、壁面 no-slip を仮定します。一定流量なら粘度が大きいほど、管が長いほど、半径が小さいほど大きな圧力差が必要で、粘性摩擦により機械的エネルギーが内部エネルギーへ散逸します。
なぜ半径の影響がこれほど大きいのか
同じ Δp、L、η の理想ポアズイユ流では Q∝r⁴。半径の小さな変化が流量を大きく変えます。
低レイノルズ数での粘性抵抗
小さな球が十分ゆっくり動き、クリーピング流の条件を満たすと、ストークスの法則は Fd=6πηrv。抵抗は v² ではなく速度 v に比例します。落下球は重力、浮力、粘性抵抗がつり合うと終端速度に達します。粘性と慣性の相対的重要度は通常 Re=ρvD/η で表します。低 Re では粘性が支配的で滑らかな流れになりやすく、Re が増えると慣性や乱流が重要になります。遷移値は形状や擾乱に依存し、万能な一つのしきい値ではありません。
温度による粘度の変化
多くの液体は温度上昇で粘度が低下します。分子配置を変えやすくなるためです。一方、気体では温度上昇とともに粘度が増えることが一般的で、速い分子が層間の運動量をより効率よく運びます。この逆の傾向は、粘度が単なる「どろどろさ」ではなく輸送特性であることを示します。
すべての流体がニュートン流体ではない
非ニュートン流体では、せん断応力とせん断速度の関係を一定の η だけでは表せません。ケチャップや一部の高分子溶液はせん断薄化し、高濃度懸濁液はせん断増粘することがあります。履歴依存を示す材料もあります。したがってポアズイユ則やストークス則を使う前に、流動領域・形状・流体の構成則が仮定に合うか確認する必要があります。
例題
1. せん断応力
η=0.80 Pa·s、du/dy=3.0 s⁻¹ のニュートン流体。せん断応力は?
解答
τ=η(du/dy)=0.80×3.0=2.4 Pa。
2. 管半径を変える
理想ポアズイユ層流で、圧力差・長さ・粘度を一定にして半径を2倍にすると流量は何倍?
解答
Q∝r⁴ より Q′/Q=2⁴=16。
3. ストークス抵抗
半径 1.0 mm の小球が、粘度 0.50 Pa·s の流体中を 0.020 m·s⁻¹ でゆっくり動きます。抵抗を見積もってください。
解答
Fd=6πηrv≈1.88×10⁻⁴ N。球まわりがクリーピング流であることを仮定します。