回折
回折は「端で少し曲がる」だけの補正ではありません。有限な開口を通った波が空間的に再構成される現象で、開口や障害の大きさが波長に比べて十分大きくないときに特に目立ちます。
回折が目立つ条件
開口幅 a が波長 λ よりはるかに大きければ幾何光学近似はよく働きます。しかし a が λ に近づくと、開口を出た波は横方向へ大きく広がります。広がりの尺度は λ/a で決まり、長い波長または狭い開口ほど回折が強くなります。これは水波、音、電波、光に共通する波の性質です。 開口内の各点からの寄与を二次波として考えると、回折をより正確に理解できます。遠方のある方向の場は、それらが異なる位相を持って足し合わされた結果です。強め合う方向と弱め合う方向が生まれるため、回折像は開口全体の情報を含み、端だけで独立した「曲がり」が起こるわけではありません。
単スリットの暗線
a sin θ = mλ
幅 a の理想的な単スリットでは暗線の条件は a sinθ = mλ(m = 1, 2, 3…)です。ここで得られる角度は暗い極小の位置であり、副極大の位置ではありません。最初の暗線は a sinθ₁ = λ で、中央極大の境界を直接与えます。 単スリットの強度は I(θ)=I₀(sinβ/β)²、β=πa sinθ/λ と表せます。β=mπ で分子がゼロになり、暗線条件が得られます。この式は側方極大が急速に弱くなることも示し、中央極大が幅だけでなく強度でも支配的な理由につながります。
第一暗線角の計算
中央極大が特別な理由
中央極大は左右の第一暗線の間にあるため、その角幅は片側の第一暗線角のおよそ2倍です。遠方スクリーンかつ小角なら y₁ ≈ Lλ/a、したがって中央極大の全幅は 2Lλ/a です。側方極大はより狭く弱くなります。これはスリット全体からの連続的な寄与の位相和で説明されます。 小角近似が十分でない場合は、まず sinθ=λ/a から θ を求め、その後 y=L tanθ を使います。sinθ、tanθ、θ を同じとみなせるのは小さい角だけです。非常に狭い開口で広い回折が起きる場合ほど、この近似を確認する必要があります。
回折と二つの波源の干渉を区別する
単スリット回折と二重スリット干渉はどちらも重ね合わせから生じますが、モデルは同じではありません。二重スリットは二つのコヒーレントな波源として近似できますが、単スリットでは開口の全幅にわたる連続分布を足し合わせます。実際の二重スリット像は各スリットの単スリット回折包絡にも包まれます。 実際の二重スリットでは二つの効果が同時に見えます。各スリットの幅が回折包絡を決め、二つのスリット中心間隔が細かな干渉縞を決めます。明暗が並ぶという外見だけでは機構を区別できず、開口幅と波源間隔を別々に読む必要があります。
開口幅がパターンを支配する仕組み
y₁ ≈ Lλ/a · W ≈ 2Lλ/a
λ を固定して a を半分にすると λ/a は2倍になり、パターンは広がります。a を固定して長い波長にしても同じ方向に変化します。逆に開口が非常に大きいと暗線角は小さくなり、中央極大は狭くなって幾何光学に近づきます。「狭い穴なら細い光束になる」とは波動領域では限りません。 Lλ/a が長さの単位を持つことは簡単な次元チェックになります。第一暗線位置がスクリーン距離 L と同程度になるような結果なら、小角近似は疑うべきで、y≈Lθ を続けるより三角関数を使った幾何へ戻る方が安全です。
例題
1. 第一暗線
λ = 500 nm、a = 5.0 μm の単スリットで第一暗線角を求めます。
解答
sinθ₁ = λ/a = 0.100 なので θ₁ ≈ 5.74°。
2. スリット幅を半分にする
他の条件を同じにして a を半分にすると中央極大はどうなりますか。
解答
λ/a が2倍になるので角広がりも増え、中央極大は広くなります。
3. スクリーン上の中央幅
λ = 600 nm、a = 0.20 mm、L = 2.0 m。中央極大の全幅を小角近似で求めます。
解答
2Lλ/a = 12 mm。