量子数
量子数は原子内の一電子状態を指定するためのラベルです。四つの暗記事項ではなく、殻→副殻→一つの軌道→スピン投影という階層を順に絞り込みます。
四つの量子数
主量子数 n
n=1,2,3…で殻を選び、軌道の大きさとエネルギースケールを強く左右します。
軌道角運動量量子数 ℓ
ℓ=0…n−1。ℓ=0,1,2,3 は s,p,d,f 副殻に対応します。
磁気量子数 mℓ
mℓ=−ℓ…+ℓ。副殻内の 2ℓ+1 個の軌道を区別します。
スピン投影 mₛ
mₛ=+1/2 または −1/2。電子の二つの許されたスピン投影です。スピンは古典的な小球の自転ではなく内在的量子性質です。
ラベルを軌道へ読み替える
3d なら n=3、ℓ=2 なので mℓ=−2,−1,0,+1,+2、すなわち5軌道。4f は ℓ=3 で7軌道です。各軌道には反対の mₛ をもつ2電子が入れるため、p,d,f の容量は6,10,14。パウリの排他原理は「同じ原子内で四量子数が完全に同じ二電子は存在しない」と表せます。
許される組合せと不可能な組合せ
制約は入れ子です。n=2ならℓは0か1だけなので2dは不可能。ℓ=1ならmℓは−1,0,+1だけで、+2はp副殻には属しません。
量子数バリデータ
量子数構造が化学へ及ぼす結果
量子数は軌道の縮退、節構造、利用可能状態を決め、それが電子配置、周期表のブロック、分光、化学結合へつながります。単なる分類記号ではなく、量子問題の対称性と許容状態を圧縮して表します。
許容状態から殻容量を導く
固定 n では ℓ=0…n−1。各ℓの 2ℓ+1 軌道を足すと n² 軌道、二つのスピン投影を掛けて最大 2n² 電子です。n=3 なら9軌道、18電子。
節は n と ℓ から決まる
総節数 n−1、角度節 ℓ、動径節 n−ℓ−1。4d は角度節2・動径節1、4s は三つすべてが動径節です。
量子数とスペクトル
原子スペクトルは許容準位間遷移から生じます。電気双極子遷移では典型的に Δℓ=±1。多電子系の微細構造には全軌道角運動量や全スピンも必要です。
軌道ラベルを解読する
2s は n=2,ℓ=0,mℓ=0。3p は mℓ=−1,0,+1。4d は5軌道、5f は7軌道。s,p,d,f は ℓ=0,1,2,3 の伝統的記号です。
| 軌道ラベル | n | ℓ | mℓ | 軌道数 |
|---|---|---|---|---|
| 2s | 2 | 0 | 0 | 1 |
| 3p | 3 | 1 | −1, 0, +1 | 3 |
| 4d | 4 | 2 | −2…+2 | 5 |
| 5f | 5 | 3 | −3…+3 | 7 |
一電子と原子全体
四量子数は軌道近似における一電子状態を表します。相互作用する多電子原子では角運動量とスピンの結合を表す ³P や ²D などの項記号も使います。
磁気量子数は「磁石の位置」ではない
mℓ は選んだ軸に沿う軌道角運動量の投影。外部磁場はゼーマン効果で向きを分裂させ、スペクトル線の分裂として観測できます。
演習
4p
解答
n=4、ℓ=1、許される mℓ は −1,0,+1。
不可能な組合せ
解答
n=3,ℓ=3,mℓ=0,mₛ=+1/2 は不可能。n=3 なら ℓ は0,1,2までです。
容量
解答
4f はℓ=3なので7軌道、各2電子で最大 14電子。